1.なるほど、私は死んだわけだ

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 あと、人間としての反応がものすごく薄くなった。私が話をしていても聞いてるのかわからないように「うん」とか「あー」とか返すだけで、上の空なのだ。  そして二年後にはもう部屋のファニシングがすっかり変わってしまっていた。  どこぞのアニメやゲームのポスターで壁は埋め尽くされ、私がぬいぐるみを飾るつもりで置いた棚などはフィギアとかグッズとかに占拠された。 「ナツキ~」  とあま~い声でそのフィギアに話しかける秀のことを見て、私は、あ、駄目だこいつ、と思ったものである。  どうやらナツキと言うのは「シキコイ」という名のギャルゲー(恋愛シミュレーションゲーム、といいつつ、「シキコイ」はほとんどエロゲーだ)に出てくる女の子の名前らしい。  まあ、秀がそんなことになってしまったのには私の責任がないわけではない。  はじめはアニメやギャルゲーにはまる秀が嫌で「マジ、そういうのやめて」と言ったものだが、それに対して秀が「いやー、大学生にとってはこういうのって普通だよ。みんなやってるから僕もやらないと話についていけないっていうかー」などと言うもんだからなるほど、つきあいというのも大変なのだなあ、と思って容認し、あまつさえ、秀が喜ぶ顔見たさにナツキのグッズなんかが売ってたら内緒で買ってプレゼントなどしていたのだから救いようがない。  あの頃の私よ地獄に堕ちろ。  もし秀が言うように大学生がみんなあんな感じなのなら日本に未来はない。    ただ、秀の行っていた学部についてはそういう系の人たちが特別多かったのかもしれない。  彼は工学系なのだけどまともな工学部ではなく、何とか工学部何とか工学科何とか工学コースと言う一体何をやっているのかわからないところに所属していた。  そういうわけのわからないところにはわけのわからないやつらがよってくるのだろう。  さて、まあ、フィギアに話しかけるくらいはまだ軽傷だったと気付くのはそれからさらに二年ほどたったころである。  並木秀は一体どのような手練手管で教授を懐柔したのか、学部を主席で卒業、博士前期過程へと進学していた。  
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