1.なるほど、私は死んだわけだ

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 私はといえばバイト先のラーメン屋でかわいい後輩にも恵まれ、古参扱いされ始め、同棲生活が五年目に突入したこともあり、並木秀という存在に一抹の不安を覚えながらも、結婚という文字がちらちらと視界の隅にちらつき始めていた。   ちなみに私の初体験は高校二年の春だ。  もちろん相手は秀。若気の至り、ほんの好奇心と言う奴のせいで私は彼にヴァージンをささげることになった。  あれは忘れもしない桜の花が舞う四月。  何が悪かったかと言うと私が当時はまっていた携帯小説と友人が悪かった。  ちょうどその時読んでいた携帯小説にそういうシーンがあったのと、さらに私の親しい友達がちょうどそのころ初体験を済ませたのと、さらにはたまたま彼の家に遊びに行った時に彼の親が二人とも出張だったのが最悪だった。  その大したことないけど奇妙な偶然の重なりの結果、その日私は自ら彼に誘いをかけてしまったのだ。  彼は男のくせにそういうことには奥手だったのではじめはためらっていたが私がちょっと不機嫌になるとしぶしぶと言った体で付き合ってくれた。  小説は嘘だった。  小説も友人も嘘つきだ。私はとりあえずプライドで何とか耐えていたのだけど、あれはいいもんじゃない。  しかし男にとってはだいぶいいものらしく、それから何度も秀は私にそれを求めるようになった。もちろん、その責任の一端は私にある。  まあ、途中から何とか私もそれに耐えるというか、まあ最後には快感を覚えるようにはなったわけだが、しかし、いつも誘うのは秀のほうからだった。  それがだ。同棲生活五年目に入ろうと言うあたりから、彼は全く私を誘わなくなった。それどころか彼は私の誘いさえ無視するようになったのである。  これが二年前から始まった彼の病の症状の一つであるとわかったのは彼がナツキモデルのオナホ(男の自慰を助ける機械)を使っているのを見たときだ。  USBでゲーム機に接続すると中のキャラクターがオナホの動きに連動して動くと言うすぐれものらしい。   正直引いた。そんなものが存在するという事実とそれを使う人間がいるという事実に。  でも私はこれは彼が大学と言う名の病巣にいるためだと思っていたので、彼が大学を出るまで我慢我慢と、毎日彼の洗濯ものをせっせと洗い、彼の毛で散らかる部屋をせっせと掃除し、彼のためにご飯を作り、彼のために風呂を沸かし続けたのだ。
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