29人が本棚に入れています
本棚に追加
少年の名は、デヴィッド・オルガー。
もうすぐ15歳になる。まだ駆け出しのバイオリニストだ。イギリスジュニアコンクールでは、バイオリン部門で優勝した。まだまだ伸び代があり、今若手の中で一番注目を浴びている。
そのコンクールの時、デヴィッドはステージで汗をきらきらと輝かせ、最前列に座る真由を見て、にっこりと笑ってバイオリンを奏でていた。
その瞬間、真由は気がついた。
もう、私だけのデヴィッドじゃない。もう私を守ってくれなくていいよ。守ってくれる必要なんか、ないの。あなたは私の手を取らなくても、一人で歩いていける……。あなたはあなたの、進むべき道がある。だから、私はデヴィッドから離れなくちゃいけないんだ。
そう思うと、真由は涙が止まらなかった。
永遠の別れでもないのに。
子供だったデヴィッドが、成長しただけ。
それでも私の中では、あなたは永遠の少年。
いつまでも変わらず、そのままでいて………。
最初のコメントを投稿しよう!