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「カフェ、いく?」
と真由が言うと、エルザはふと辺りを見回して、
「あら?珍しい。あんたのそばにデヴィがいないなんて」
と言うと、真由はギクリとして苦笑した。
「離れようって手紙を出したの。だから、ここには来ないわよ…。それに今頃、大事なコンクールがあるもん」
真由がそう言って俯くと、エルザは驚いた。
「何故そんな馬鹿なことを…?」
「だってデヴィは…!」
と言って顔を上げてエルザを見つめると、エルザは眉をしかめて真由を見て、その肩を掴んだ。
「何が怖いの?真由」
とエルザが静かに尋ねると、真由はきつく目を閉じた。
「……私の存在が、いつかきっと重くなる。いつか、私のもとから巣立っていくわ」
と真由が言うと、エルザは溜め息をついた。
「…ほんとは、違うでしょ?」
「えっ…」
真由はエルザに心を読まれたような後ろめたさを感じて、目をそらして俯いてしまった。
「……出ようよ」
と真由は言ってドアを開けると、エルザは溜め息をついてメルの手を繋ぎ、真由の後を追いかけて、3人は控室を出た。すると、そこに真由のマネージメントをしているリリィが携帯電話を持ってきて、
「真由。ロンドンにいるシンディからお電話です」
と英語で言うと、真由とエルザは顔を見合わせて、真由はリリィから携帯電話を受け取った。リリィは、シンディの付き人の妹で、真由より10歳年上の独身の英国人女性だ。
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