前編

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「カフェ、いく?」 と真由が言うと、エルザはふと辺りを見回して、 「あら?珍しい。あんたのそばにデヴィがいないなんて」 と言うと、真由はギクリとして苦笑した。 「離れようって手紙を出したの。だから、ここには来ないわよ…。それに今頃、大事なコンクールがあるもん」 真由がそう言って俯くと、エルザは驚いた。 「何故そんな馬鹿なことを…?」 「だってデヴィは…!」 と言って顔を上げてエルザを見つめると、エルザは眉をしかめて真由を見て、その肩を掴んだ。 「何が怖いの?真由」 とエルザが静かに尋ねると、真由はきつく目を閉じた。 「……私の存在が、いつかきっと重くなる。いつか、私のもとから巣立っていくわ」 と真由が言うと、エルザは溜め息をついた。 「…ほんとは、違うでしょ?」 「えっ…」 真由はエルザに心を読まれたような後ろめたさを感じて、目をそらして俯いてしまった。 「……出ようよ」 と真由は言ってドアを開けると、エルザは溜め息をついてメルの手を繋ぎ、真由の後を追いかけて、3人は控室を出た。すると、そこに真由のマネージメントをしているリリィが携帯電話を持ってきて、 「真由。ロンドンにいるシンディからお電話です」 と英語で言うと、真由とエルザは顔を見合わせて、真由はリリィから携帯電話を受け取った。リリィは、シンディの付き人の妹で、真由より10歳年上の独身の英国人女性だ。
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