55人が本棚に入れています
本棚に追加
「血抜きしないと、食べられないよ」
木に吊るすと、次の獲物を狙ってみた。
「弘武、ナイフ貸して」
藤原に手を出されて、俺はポケットからナイフを出した。
「雉、捌いておくよ」
料理をするならば、肉が切れるナイフがいいだろう。サバイバル用をズボンから出すと、藤原に渡した。
「焼き鳥がいいかな?」
竹を串にするのか。
「それもいいね。塩が欲しいな」
「海水をかけてみるよ」
山に入ってみたが、二匹目は難しい。手ぶらで帰ってゆくと、藤原が焼き鳥をしていた。
「印貢、鳥肉は結構量があったよ」
火もどうにか保っていた。
「ここで迎えが来るまで、火は絶やさないようにするから。薪が必要」
波が穏やかになってきた。水が濁っているので、魚は取れないが海藻が流れ着いていた。俺は海藻を拾うと、井戸水で洗ってみた。
「印貢、海藻なら拾い集めて洗ったのが鍋にあるよ」
迎えが来てくれることを期待するが、まだ波は荒い。夜になることも想定して、食料を確保しておきたい。
薪も山ほど集めてあったので、キャンプファイヤーも出来そうであった。
「貝はないかな」
竹を細工して、熊手のようなものを作ってみた。浜を走ってみると、貝が幾つか採れていた。
「俺たちがやります。印貢先輩は休んでいてください」
俺から熊手を奪うと、中学生が浜辺で走り始めていた。
「弘武、包丁あるか?」
征響は手に果物らしきものを持っていた。食べられるのか試してみるのだろう。
「包丁はありません」
でもナイフを出してみた。
「昼メシにしよう」
藤原が声をかけると、バラバラと人が集まってきた。
「鶏肉」
捌いている時は悲鳴をあげていたのに、中学生はガツガツと食べていた。
「藤原、料理が出来たのだな」
藤原の料理は結構おいしい。
「料理か、これ?」
肉を食べると、心持ち元気になる気がする。生き物を食べるということは、生きていたエネルギーを貰う事なのであろうか。
「次はヤギだよね」
「それまでに、帰りたいけどね」
藤原も、どちらかといえば巻き込まれたクチだ。でも、どことなく楽しそうにしているのが、藤原らしくていい。
「貝は砂抜きしておくか。ワカメと汁物かねえ」
「それもいいよね」
貝は、思ったよりも多く採れた。
最初のコメントを投稿しよう!