『宝島』

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「血抜きしないと、食べられないよ」  木に吊るすと、次の獲物を狙ってみた。 「弘武、ナイフ貸して」  藤原に手を出されて、俺はポケットからナイフを出した。 「雉、捌いておくよ」  料理をするならば、肉が切れるナイフがいいだろう。サバイバル用をズボンから出すと、藤原に渡した。 「焼き鳥がいいかな?」  竹を串にするのか。 「それもいいね。塩が欲しいな」 「海水をかけてみるよ」  山に入ってみたが、二匹目は難しい。手ぶらで帰ってゆくと、藤原が焼き鳥をしていた。 「印貢、鳥肉は結構量があったよ」  火もどうにか保っていた。 「ここで迎えが来るまで、火は絶やさないようにするから。薪が必要」  波が穏やかになってきた。水が濁っているので、魚は取れないが海藻が流れ着いていた。俺は海藻を拾うと、井戸水で洗ってみた。 「印貢、海藻なら拾い集めて洗ったのが鍋にあるよ」  迎えが来てくれることを期待するが、まだ波は荒い。夜になることも想定して、食料を確保しておきたい。  薪も山ほど集めてあったので、キャンプファイヤーも出来そうであった。 「貝はないかな」  竹を細工して、熊手のようなものを作ってみた。浜を走ってみると、貝が幾つか採れていた。 「俺たちがやります。印貢先輩は休んでいてください」  俺から熊手を奪うと、中学生が浜辺で走り始めていた。 「弘武、包丁あるか?」  征響は手に果物らしきものを持っていた。食べられるのか試してみるのだろう。 「包丁はありません」  でもナイフを出してみた。 「昼メシにしよう」  藤原が声をかけると、バラバラと人が集まってきた。 「鶏肉」  捌いている時は悲鳴をあげていたのに、中学生はガツガツと食べていた。 「藤原、料理が出来たのだな」  藤原の料理は結構おいしい。 「料理か、これ?」  肉を食べると、心持ち元気になる気がする。生き物を食べるということは、生きていたエネルギーを貰う事なのであろうか。 「次はヤギだよね」 「それまでに、帰りたいけどね」  藤原も、どちらかといえば巻き込まれたクチだ。でも、どことなく楽しそうにしているのが、藤原らしくていい。 「貝は砂抜きしておくか。ワカメと汁物かねえ」 「それもいいよね」  貝は、思ったよりも多く採れた。
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