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頭を撫ぜないで欲しい。
「一回戻る。又来るからな」
やはり一回では乗れなかったか。では、続きの花火でもしていようかとすると、遠くで雷が鳴っていた。台風の次は雷なのか。又、救助されなくなってしまう。
薪が濡れるのは避けたいが、もうテントも洞窟もない。それに、まだ山では土砂崩れの心配もあった。
「すごいサイバイバルだよね」
「連休で良かった……」
サイバイバルで学校を休んだなどと言われたら、笑い者になってしまうところであった。
「とりあえず、山で採ってきた葉があるからさ」
キャンプファイヤー用の枝を組み直し、簡易的な小屋を作る。そこに葉を乗せると、他の木で重ねる。付近にも葉があったので、更に重ねると、どこかの遺跡の民家のようになった。
これが布であったらならば、インディアンの小屋にも近い。
「意外に器用だな」
征響が俺を褒めていた。俺は、野外は強いと思う。何しろ、何もない場所でも生きていた。
中学生がいなくなったので、残っているのは高校生だけになった。見慣れたメンバーで心なしか気が緩む。
「湯沢、何しているの?」
「余ったタケノコとみかんの皮で、漬物を作った」
湯沢は中学生の面倒をみていたので、ここに来てから俺との接触がなかった。
「流石、漬物屋」
すると、秋里が漬けてあったみかんの皮で、妙な飲み物を作ってくれた。やや発酵しているので、アルコール成分がありそうだった。
「よ、喫茶店」
ノリが軽くなってきた。
薪は葉で作った小屋の中に入れたが、どうにか人間も入るスペースが残った。小屋は海から少し離したが、波が荒れたら危険ではあった。
雨がパラパラと降り出すと、すぐに土砂降りになった。雷が鳴り響き、周囲が明るくなると地響きがした。
「雷が落ちているかな」
雨漏りはするが、結構快適な小屋であった。しかし、二泊もこの島で過ごすとは思わなかった。今度は毛布もないが、嵐ではないのでその分は気が楽であった。
「印貢、寒くないか?」
藤原が俺に上着をかけてきた。俺は、紐を作ったりしていたので、上着が既にない。
「藤原、俺はいいから。大丈夫」
秋里に近寄ると、倉吉に襟首を掴まれた。
「子供は飲んではダメみたいだ」
全員未成年であろう。仕方がないので、タケノコを食べていた。
「征響、ラジオはあるかな」
征響はラジオを出すと、ニュースに合わせる。
「花火も綺麗だよな」
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