55人が本棚に入れています
本棚に追加
外の雨を確認する。座るスペースしかないので、眠るわけにもいかない。寄りかかってしまったら、小屋が倒れそうであった。
「一年三人、眠っていいぞ」
秋里がスペースを割り振っていた。
「ここ、高校二年はいなかったの?」
そもそも天神の学生は少ない。住民自体が少ないのだから当たり前でもあった。でも、中学生はそれなりにいたので、もっと高校生も多くていいはずであった。
「高校二年の学年は女性しかいなかった。征響にはファンクラブもあって、変に仲間になると無視されるらしい」
よく分からない理論であろうが、要は天狗には女性がいなかったということだろう。
それに、征響で境目であったので、先のチームに入った者も多くいた。年上の中に混じっていれば、危ない事をしなくても済む。
「朝方になったら叩き起こす。そこからの見張りは頼むからな」
秋里の脅しは怖い。俺たちは急いで横になると眠る事にした。
「印貢、こっち」
藤原は甘くて、自分の服を俺の下に敷き、俺を包むように眠っていた。後ろには湯沢もいるので、寒くはない。
波音を聞いていると荒れていて不安になるが、この温もりは心地いい。
「印貢は、どこでも眠るな」
倉吉が俺をバカにしていたが、だが、そのまま俺は眠ってしまった。
早朝というのかまだ夜に、俺は秋里に叩き起こされた。
「俺は眠い、交代するぞ」
起きていたのは秋里だけで、征響も倉吉も眠ってしまっていた。
起こされたのも俺だけで、藤原と湯沢は眠っている。
でも皆が眠っている方が、俺は気楽であった。雨が止んだばかりの浜辺に出ると、もう月が出ていた。
月明かりがあれば、充分に見える。
山に登ってみると、洞窟の周辺を確認してみた。土砂に埋もれてしまって、洞窟は掘り起こせそうにもない。でも、土砂は上から下へと抜けていた。
流れた下へと歩いてみると、飯盒を見つけた。泥の中から飯盒を拾ってみると、中からシャキシャキという音がしていた。
米が濡れると嫌だったので、洗った飯盒を乾かし、中に米を入れておいたのだ。
飯盒を二個ほど見つけると、そのまま山を降りた。
井戸水で飯盒の外側を洗い、中を開いてみると、米は無事であった。
米を見て、こんなに美味そうだと思ったのは初めてだ。
米をとぐと、浜辺で火を起こした。
米を炊いていると、遠くに太陽の光が差してきた。
「綺麗だな」
最初のコメントを投稿しよう!