『宝島』

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学園刑事物語 天神四区 三・五 『宝島』 第一章 置き去りの島  天神の祭りの際に皆で手伝いをして、各店の限定品を売り切ったら、旅行に連れて行って貰える約束をした。  しかし、連れて来られた先は小さな島で、しかも置き去りにされていた。 「どうなっている……」  俺、印貢 弘武(おしずみ ひろむ)は、浜辺に作られた小さな船着き場で、暫し呆然としていた。  祭りの打ち上げと称して、商店街の面々は海など行かず、温泉に入って飲んでいた。それでは子供は可哀想だと、小学生は遊園地に行った。天神の天狗チームには、約束があったなと船で島に行きキャンプをしてきてもいいと許可が出た。  征響を含む高校三年組は、渋々船に乗った。キャンプなどしたくはないが、他のメンバーが心配なので、保護者として同行するという。  テントや食料は、現場にあるからと説明されていた。  しかし、船から降りると、佳親が手を振り、将嗣が大笑いして船を出してしまった。  佳親は俺の親で、将嗣は横にいる、藤原 由幸(ふじわら よしゆき)の親であった。  嫌な予感がして、周辺を捜したが、民家も人の気配も全くない。簡易的な船着き場以外は、何も無かった。しかも、食料もテントもどこにも置いていない。 「あの酔っ払いども……」  悪ふざけも度を越している。  電話を掛けようにも電波は無かった。親共の酔いが冷めて正気になるまで、どうにかここで過ごさなければならない。 「征響、何かありますか?」  久芳 征響(くば まさき)は俺の兄ということになっている。久芳 佳親(くば よしちか)も血縁上の兄であった。複雑な家庭の事情で、俺は印貢 弘武で、代理出産で生まれた佳親の子供であった。 「何も無い」  佳親も、高校三年で受験も試合も控えた征響を、よく無人島に置き去りにできたものだ。でも、征響と同じ学年の秋里も倉吉も、同時に置き去りにされていた。 「とりあえず、昼飯を確保するか」  何も無い島ではあるが、どういう訳は井戸があった。井戸はまだ使用でき、汲み上げる装置も残っていた。手押しのポンプのようなもので、取っ手を上下させると水を汲み上げた。一口飲んでみると真水のようで、海水ではない。でも生水なので、沸かした方がいいかもしれない。 「水は確保か」   最低限水があれば、親共が思い出して迎えに来るまでは、問題なく生きていられるだろう。 「後ろは山か」 
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