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山に登ってみると、島の全容が見えた。晴れているので、本土も見える。こんなに本土に近かったのかと思ったが、遮るもののない海であるので距離は分からない。見えるだけなら、百キロメートル先でも見えそうだ。
砂利が滑るので、幾度か転びそうになったが、頂上へとたどり着いた。頂上から岩を捜してみると、似ているものが幾つもあった。
頂上から首吊りの浜辺を見てみる。その線状にある岩に座ってみた。
岩は斜面を転がったのか、幾つも傷がついていた。そもそも、自然の岩なので割れたり転がったりはするだろう。
でもその中に気になる傷がある。ナイフで刻んだ傷のようなものが、岩を一周していた。俺は動画でその線をゆっくりと辿ってみた。それから、ここに何か埋められているのかと岩を押してみる。
「あ……」
押した岩は、斜面を転がり落ちていった。かなり巨大な岩であったが、バランスが悪かった。座った時に転がらなくて良かったと思ったが、同時に下を確認し、人がいなくて良かったと安心した。
岩の下は固く掘れそうにもない。
では台風で岩も移動してしまっていたのだろうか。それも違っているようにも思える。岩には上部に泥が付いていなかった。少なくても、上部は長い間風雨にさらされ、下ではなかった。
「見つけられないか……」
隠したとあって、埋めたではない。
もう一度岩を見るかと近寄ると、砕けてしまっていた。一番大きな破片によると、又、足を滑らせて岩を蹴り飛ばしてしまった。すると更に岩が斜面を下り、粉々になっていた。
「あ……」
もう俺は、動かない方がいいのかもしれない。証拠の品が、パズルのようになってしまう。
岩を集めようとしていると、浜の方角から幾人もの声が聞こえてきた。
「征響!弘武!」
佳親の声であった。
「由幸!」
将嗣も来ているようであった。将嗣の声に反応した藤原が、斜面を滑り降りて行った。
藤原でも親に走り寄るのか。俺もつられて走り、林を抜けると浜辺へと出てみた。
藤原はまっすぐに将嗣に走ってゆく。親子だなと見ていると、そのまま藤原は将嗣を殴り飛ばしていた。
「このクソ親父。全員が死にかけたぞ!危ない遊びをさせるなと、常々言っているだろ!」
「はい……すみません」
殴られた将嗣は、子供のように反省していた。
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