『宝島』

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 遺体の発見で、警察も来ていた。こういう時は秋里が出て、理奈の居場所も伝えていた。後で状況を教えろと言われたが、とりあえず帰ってもいいとの許可が出た。 「やっと風呂に入れる」  全身が潮風にまみれている。  船の甲板で風にあたっていると、そっと佳親が寄ってきた。俺に、再び抱き付こうとするので、完全拒否する。 「三日風呂に入っていませんので、臭いですよ」  船の中では、それぞれの親子が無事を確認し合っていた。征響は客席で寝ている。 「でも、生きているって触れて確信したいよね」  では、握手にしておこう。 「征響に行けばいいでしょう」 「……蹴り飛ばされた」  もう征響には抱き付こうとしたらしい。 「季子さんは?」 「陸で帰りを待っている。風呂と食事と寝床、そこで待つってさ」  どこか季子らしい。佳親が必ず、俺や征響を連れ帰ると信じているということだ。 「さて、何があったか話して欲しい」 「ええ……長いですよ。沢山ありましたから。遺体だけでいいですか」  佳親が首を振った。 「島に入ってからのこと、全部、聞かせて。それで、危険な場面を抜かして、季子にも教えてあげて」  おおかたの出来事は、先に帰って来た中学生から聞いているようであった。でも中学生も、俺や高校生チームは、別行動もあって大変だったとしか言わなかった。  船に揺られながら、佳親に最初から説明してみると、確かに楽しい思い出だった。こんな経験は早々できない。しかも、二度としたくはない。  港に到着すると、送迎バスが待っていた。乗り込むと、旅館に到着した。家に帰りたいが、確かに風呂には先に入りたい。 「弘武君!」  希子が走り寄ってくると、手を伸ばしてきた。流石に季子は邪険にできないと思っていると、身ぐるみに近く脱がされていた。 「洗濯!」  ここで脱がせなくてもいいだろう。バスタオルを巻いた状態で、風呂場に詰め込まれていた。 「季子さん強い……」  佳親よりもしっかりしている。 「弘武君!」 「はい!」  聞こえていたかと身構えてしまった。 「着替えを置いておくね」  広い浴場は、全員が入っても余裕があった。 「征響さんの背中でも流してみたら」  藤原が征響を横目で見ていた。  征響も色々無理をしていたのか、怪我が多かった。背中の打撲も酷く、いつ出来たのかは分からないが、島でのものだろう。痛いも苦しいも一言もなく、こんなに怪我をしていたのか。
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