『宝島』

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 山で食べ物はあったであろうか。兎くらいは生息しているのか。白い生き物がいるので目を凝らしてみると、ヤギであった。 「ヤギって食べられるのかなあ」 「まあ、食べられるだろうけど……」  では狩ってきてみるか。血抜きのために、早めに狩って吊るしておきたい。 「でも、魚の方が無難ではないかな」  藤原は、俺をやさしく諭している。海が目の前であるので、魚の方が無難であるのか。 「そうか?じゃ、魚をとってくる」  山に入ると、薪を拾っておく。竹が生えていたので、幾本か取ってくるとナイフで削って尖らせた。 「印貢、どこからナイフが出た?」  藤原は、天神ではなく四区の住人であるが、祭りに出ていたので一緒の慰安会に参加してしまった。そして、現在、一緒に島に置き去りにされている。 「ナイフなら、あちこちにあるよ」  靴にもナイフを隠し持っている。全身で数えると、十本はある。 「そっか、後で貸して。魚をさばいておくよ」  藤原は、あんまり気にしない性格なのか、のんびりと構えていた。 「俺、魚、取ってくる」  俺は靴を脱いで、ついでに服も脱いで海に入り、竹で魚を突いてみた。  竹は浮いてしまい、又、軽いのでスピードが出ない。でも幾匹か刺してみると、浜辺に帰る。 「印貢、海パンだったんだ」 「そう。泳ごうと思っていたからさ」  まさか、魚の漁をするハメになるとは思わなかった。 「藤原、魚は取らないの?」 「俺、印貢のように器用ではないからさ。薪を集めておくよ」  日がある内に、この島の全容も見たかった。俺は、中学生に竹やりを作ってやると、魚の取り方も教えてみた。 「いける、いける」  中学生は面白がって魚を採っていた。これならば、昼夜の食事の分くらいにはなる。 「藤原、火を起こす」  竹さえあれば、火を起こせる。摩擦で火を出せるのだ。 「魚を焼いていてね。俺、山に登ってくる」  征響達は、浜辺から島を一周してくるようだ。俺は一人で山に登ってみた。  そんなに高い山ではない。すぐに頂上に行ってしまうと、周囲を見渡してみた。見る限りどこにも建物は無く、無人の島であった。頂上に旗があったので、つい抜いてみると、地図が置いてあった。その地図の幾つかの場所にバッテンがついていた。 「佳親だな……」  こういうイタズラは、佳親が得意とするところだ。俺たちに探検をさせようとしたのであろう。
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