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自殺するならば、真実をどうにか皆に知らせようとするだろう。それに島でも、本土は見えている。どうしても帰りたいのならば、本土を目指して船でも作ってみるだろう。
今度はホーから連絡があった、東タの研究資料の解除コードに賞金がかかっているという。
「それなら解ける」
そうか、これが東タの憎くて愛しい者に残した宝物であったのか。何もかもが全く関係はなく、東タの恐らく難解なデータを読み解けるのは、共同研究者で同じ頭脳を持つ湖南だけだ。東タは、同じ頭脳の湖南を憎みながらも、世界中で誰よりも理解し愛していた。
東タのデータは、情報の世界に浮かんだ小さな島のようであった。その島に、東タは自分の全てを残した。
他殺か自殺かは、気にしないことにしよう。事件は警察が解決する。俺は、動画を見ると岩の傷を紙に書いた。等間隔に刻まれたとして、無い場所はゼロだ。それを二進数として見てみると、数字が浮かんできた。もうひとひねりするのか、このままなのか。
「解けたら、ホーの誕生日祝いでいいよ」
コードを送信してみた。すると、ホーから『!』の返事がきた。どうやら解除できたらしい。
これで眠れる。多分、東タもこれで安らかに眠れるだろう。
俺はゆっくりと眠ってしまった。
後に、東タは殺されたと相澤から連絡があった。研究所の全員を逮捕してみると、東タが解除コードを言わないので、木に吊るしたら殺してしまったと自白した。研究員なので、頭は良いのだろうが、吊るしたら人は死ぬとは知らなかったのであろうか。
翌日、目を覚ますと征響はまだ眠っていた。荷物から着替えを出そうとすると、バッグと一緒に置いてあった、二升瓶もワインも無くなっていた。泥棒なのか、部屋を隅まで探してみたが、どうにも見つからない。
「征響、昨日、この部屋に誰か入ったか?」
征響も相当疲れていたらしく、やっと目を開けると、周囲を確認していた。
「途中、佳親と将嗣さんの声が聞こえたけど……」
征響もそのまま眠ってしまったという。
佳親と将嗣の組み合わせには、ろくな事がない。
佳親の部屋に行くと、季子だけが眠っていた。藤原の離れに行ってみると、藤原は起きていて旅館の犬と遊んでいた。
「弘武、おはよう」
「由幸、おはよう。で、佳親は俺の酒を持って来ていなかったか?」
藤原はやや考えてから、何かを思い出して戸を開けた。
「これか?」
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