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雨ならばともかく、台風はまずいのではないのか。ここには通信方法もなく、民家もない。台風の前に、親父達が思い出してくれるといいが、既に波が荒れだしていた。
島に来る前に、台風をチェックしておけば良かった。だが、まさか島に置き去りにされるとは思ってもみなかったのだ。
「……ご飯、もう一回炊いておく。波が荒れたら海には入るな。薪は集めて洞窟に入れておく」
雨の前に、洞窟に避難したい。
征響は台風情報で、船は来ないと判断すると、全員に仕事を割り振っていた。
薪を集める、米を炊く、物資を移動する。
雨が降り始めるころには、全員が洞窟に集まっていた。
洞窟では空気の循環が悪く、一酸化炭素中毒が怖いが、やはり火は起こしておきたい。水は、飯盒と鍋に汲んでおいたが、足りそうには無かった。
最悪、雨水を貯めて沸かして飲むか。井戸のあった位置は浜に近かったので、台風が去るまで行かない方がいい。
平らな場所で火を起こすと、薪を周囲に並べた。雨が吹き込んでくるので、テントの布で吹き込む先を塞いでみた。
風に流れがあるので、空気の入れ替えは必要なさそうだ。
「どんなサバイバル訓練だよ、これ」
でも、どことなく楽しい。このメンバーでいることが、楽しいのかもしれない。
「眠る時は、地面に体を付けない。体温が奪われるから。毛布を敷いて二人一組で寝る」
ラジオで台風情報を聞きながら、火の傍に集まっていた。
米はおにぎりにしておいたので、火で温めて缶詰で食べる。こんな状況であるのに、腹が減り、ご飯がおいしい。
「弘武、おにぎりは朝の分もあるのか?」
リュックを見ると、微妙な量であった。朝、台風が去っていたならば、炊いたほうがいい。
「おにぎりは微妙です。米はまだあります」
「あ、俺チョコあります」
藤原は、背負っていたリュックを降ろした。そういえば俺も、リュックを持ってきていたはず。藤原を見ると、リュックの中から菓子を次々取り出していた。
菓子があるから、藤原に余裕があったのか。これだけ食べ物があれば、一晩くらいはどうにかなる。
俺のリュックが見当たらないと思ったら、藤原が持ってきていてくれた。着替えくらいしかないが、それでも濡れた海パンから着替えられる。タオルも入っていたので、枕にできる。他に忘れていたが、キーホルダーが懐中電灯になっていた。
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