55人が本棚に入れています
本棚に追加
それぞれ鞄の中身を確認したが、孤島に置き去りは流石に予期していなかったので、食料はあまり無かった。
「藤原、ポテチがあったなら、塩を捜した時に言えよ」
「そうだね……」
明日は、ポテトチップスをおにぎりにまぶしてみよう。
しかしラジオを聞いていると、台風は予想以上に停滞していた。台風のスピードが遅く、夜の内に通り過ぎずに、明日の朝九時頃ここを通過する見込みになっていた。
通過しても暫くは船が出せないだろう。早くても迎えが来るのは、明日の夕方か。ならば、それまでは、ここにいた方がいい。
「藤原、寝よ」
水が入ってくる可能性があるので、地面から離れた平らな岩を捜し、そこに毛布を置いた。座るスペースしかないが、それでも一旦眠っておきたい。
「印貢、膝枕してやるよ。ほら、ここ」
「いらん」
毛布は、体格を考慮して、中学生と高校生の組み合わせにしていたが、藤原と俺は高校生同士になっていた。征響は睨んでいるが、俺は藤原と一緒の方がいい。藤原ならば、いざという時に行動し易い。
しかし、俺は爆睡してしまい、藤原の膝枕どころか藤原を布団代わりにして眠っていた。
朝方になって、更に風が強くなっていた。洞窟の中にも暴風が吹いてくる。雨粒も吹き込んでくるので、寒くなってしまった。毛布を引き寄せようとすると、温かい腕が包み込んできた。
この腕は誰だっけと目を開くと、間近に藤原の顔があった。
「ごめん、藤原。眠れなかったろ?」
火は消えてしまい、洞窟の中も暗い。
「いや、眠ったよ。心配ない」
藤原は俺を抱えていたので、多分、殆ど眠っていないだろう。
「何時だ?」
朝の七時だというのに暗く、日が昇っていないかのようであった。嵐はピークが近いのか、時折強風が吹き込んでくる。しかも、激しい雨音が絶えずしていた。
「メシ」
こんな時でも腹が減る。まず、岩で竈を作ると、雨風を防ぎ火を起こした。竈の周辺に濡れている衣服と、薪を置く。
「おにぎりは、一人半分ね」
米はあるし、火も確保できたので、飯盒で地道に炊こう。
「藤原、眠っていていいよ。ごめんな」
藤原の菓子をおかずに、おにぎりを食べる。
「印貢抱えて一晩過ごすなんて、幸せ過ぎて眠れなかっただけ」
藤原の目に隈ができているので、ひとまず休ませる。
最初のコメントを投稿しよう!