『宝島』

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 それぞれ鞄の中身を確認したが、孤島に置き去りは流石に予期していなかったので、食料はあまり無かった。 「藤原、ポテチがあったなら、塩を捜した時に言えよ」 「そうだね……」  明日は、ポテトチップスをおにぎりにまぶしてみよう。  しかしラジオを聞いていると、台風は予想以上に停滞していた。台風のスピードが遅く、夜の内に通り過ぎずに、明日の朝九時頃ここを通過する見込みになっていた。  通過しても暫くは船が出せないだろう。早くても迎えが来るのは、明日の夕方か。ならば、それまでは、ここにいた方がいい。 「藤原、寝よ」  水が入ってくる可能性があるので、地面から離れた平らな岩を捜し、そこに毛布を置いた。座るスペースしかないが、それでも一旦眠っておきたい。 「印貢、膝枕してやるよ。ほら、ここ」 「いらん」   毛布は、体格を考慮して、中学生と高校生の組み合わせにしていたが、藤原と俺は高校生同士になっていた。征響は睨んでいるが、俺は藤原と一緒の方がいい。藤原ならば、いざという時に行動し易い。  しかし、俺は爆睡してしまい、藤原の膝枕どころか藤原を布団代わりにして眠っていた。  朝方になって、更に風が強くなっていた。洞窟の中にも暴風が吹いてくる。雨粒も吹き込んでくるので、寒くなってしまった。毛布を引き寄せようとすると、温かい腕が包み込んできた。  この腕は誰だっけと目を開くと、間近に藤原の顔があった。 「ごめん、藤原。眠れなかったろ?」  火は消えてしまい、洞窟の中も暗い。 「いや、眠ったよ。心配ない」  藤原は俺を抱えていたので、多分、殆ど眠っていないだろう。 「何時だ?」   朝の七時だというのに暗く、日が昇っていないかのようであった。嵐はピークが近いのか、時折強風が吹き込んでくる。しかも、激しい雨音が絶えずしていた。 「メシ」  こんな時でも腹が減る。まず、岩で竈を作ると、雨風を防ぎ火を起こした。竈の周辺に濡れている衣服と、薪を置く。 「おにぎりは、一人半分ね」  米はあるし、火も確保できたので、飯盒で地道に炊こう。 「藤原、眠っていていいよ。ごめんな」  藤原の菓子をおかずに、おにぎりを食べる。 「印貢抱えて一晩過ごすなんて、幸せ過ぎて眠れなかっただけ」  藤原の目に隈ができているので、ひとまず休ませる。
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