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その女の子は、俺の手を引き上げる様に手を掴む。
「私は、若桜音羽(ワカサ オトハ)。君の名前は?」
俺の右手を引きつつ尋ねてくる若桜は、俺の顔をちらり見ては、歩み始める。
「俺は、時枝綴(トキエダ ツヅリ)。」
フムフムと頷くと質問が続く。
「私は、音羽(オトワ)高等学校特別科1年。時枝君は?」
「俺は、叶翔(トワ)高校2年。若桜は、自分の名前の漢字で学校選んだの?」
1個下かと思った後の純粋な疑問を口にしたのだが、からかわれた事があるのか俺の言葉の意味と顔を見比べ若桜は息を吐いた後、答えた。
「自分の通いやすい、やりたいことが一致した学校だったから。学校名は、もう読み方が違うだけいいやって考えることにしたの。」
自分に言い聞かすように繰り返し頷くと次の質問とペシッと背中を軽く叩き促された。
「今は、何処に向かってるの?」
「音羽校。」
そう俺に答えた若桜は、ニコリと企むような笑顔を向け俺の手を掴んだまま音羽の校門まで走り出した。
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