プロローグ

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 やがて頂上に辿り着くと、丸い窓のついた小さな扉が現れた。シェリーは鞄から小さな鍵を取り出して、鍵穴に差し込む。カチャリ、と音を立てて扉が開いた。シェリーは内部に身体を滑り込ませ、扉を閉める。また鍵をかけようとしたが、そのとき、うっかりして髪のリボンを挟んでしまったので、一度扉を開けてリボンを外してから、また改めて鍵をかけた。  シェリーはふう、と息をつくと、鍵を鞄にしまってから、髪のリボンを結い直す。それから、羽を畳んで背中側に収納し、小部屋の中心にあった望遠鏡の前に腰掛けた。手元の机に帳簿を広げ、ペンを片手に望遠鏡を覗き込む。  長老たるシェリーの祖父曰わく、この望遠鏡は、レンズにあたる部分が水晶で出来ており、その水晶の方に特殊なまじないをかけてあるらしい。それだから、覗き込めば、通常は目に見えないはずの虚界の姿が見えるのだという。 「……異常はありませんね」  しばらく望遠鏡を片手で動かしていたシェリーは、こう呟きながら、帳簿に記録を書き留めた。
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