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あまりにもシェリーが恥ずかしそうにしているので、レオンは苦笑しながら彼女を優しく地面に下ろしてやる。
「急に走っちゃ駄目ですよ。ドレスに足を取られてしまう」
「わ、私、そんな子どもじゃないですもん」
地に足を着く直前、からかわれたシェリーは不機嫌そうに頬を膨らませたが、脇から現れた母の姿を認めると、途端に表情が緩む。気を強く張っていたのがみるみる崩れて、大きな瞳の端にうるうると涙が溜まっていく。
ルナの脇に祖父である長老まで並ぶと、シェリーはもう駄目だった。レオンの言い付けも忘れて一目散に駆け出し、母と長老の胸に飛び込む。
「お母さまっ! お祖父さまっ!」
「おやおや、この子ったらまあ。まるでルナを見つけて帰ってきたときみたいに泣きおって」
「変わらないですわねえ、おじいちゃま」
二人に左右から髪を撫でられるさまは、まるで童女のようだった。集まっていた取り巻きたちも、そんな姫の様子を微笑ましく見守っている。
よく怒り、よく泣き、よく笑う無邪気な姫は、天界の住民たちが一丸となって、子のように孫のように可愛がってきたのだ。姫君らしい凛とした態度もいいが、たまにはか細いほど可憐な姿を見せてくれた方が嬉しいらしい。
シェリーが姫君としていかに支持を得ているのかを目の当たりにしたようで、レオンも自然と背筋が伸びる。
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