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この部屋は私の手によっていろいろと改良されている。申し訳程度に備え付けられていた押入れは、下の段を二つに区切り、服を収納するところと靴を収納するところに分けた。上の段には突っ張り棒を取り付け、コートやスーツなどをかけ、その下に布団を収納している。
どうすればきれいに収まるかを考えながらスペースを作っていくのは、パズルをしているみたいで面白い。他に趣味もない私は、この収納に没頭した。自分の手によって作られた空間にイメージどおりにものが吸い込まれていく。きちんと収まればガッツポーズをするし、改良の余地ありならそのことだけを考え続ける。失敗することもあるが、ぴったり収まったときの快感は何者にも変え難かった。
次に目を付けているのはキッチンのあたり。お気に入りの皿やカップなんかを自分が作った空間に吸い込ませる。考えただけでワクワクとしてくる。
冷蔵庫に手を伸ばし、ドアを開けてみる。中には作り置きの麦茶と賞味期限がとうの昔に過ぎた卵、そして焼き肉のたれが入っていた。
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