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「佐原さんですよね?」
「そうです」
「俺、水野です。いつもは昼だけなんですけど、今日は中井さんに頼まれちゃって」
中井さんと聞いて中井さんのスキンヘッドを思い出す。
「そうなんですか。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
靴をそろえていると、水野君のつま先が目の前にあった。水野君はまだここから立ち去らないようだ。こちらから話しかけることを望んでいるような気がしたので、私は口を開いた。
「学生ですか?」
事務所の中に入ってかばんを置くために足を踏み出した。水野君は体を少し斜めにして、私の通るところを作ってくれる。外に出ればいいのにと思ったけど、口には出さなかった。
「そうです。夜間の学校に通ってますよ。あ、高校生っす」
「えらいね」
上着を脱いでハンガーにかけたあと、髪をひとつに束ねて、くるりと丸める。
「佐原さんは?」
エプロンをしてポケットにメモ帳とペンを入れる。
「フリーター」
備え付けの鏡で髪の毛をチェックし、それからサンダルを靴棚から出して、さっき脱いだ靴の隣に置く。
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