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公園のトイレの壁に「ミミズン」と幼い字の落書きがあり、幼稚園の先生が腕を組んで眺めている。
「こんなところに落書きした子は誰かな〜?」
それは十年前、広い砂場のある公園で幼稚園児たちが遊んでいた想い出のシーンで、今でも時々その先生のキーの高い声が頭の中に響いて注意されている気がした。
「あのトイレのラクガキ書いたの、オザケンでしょ?」
柑乃がラインでそんな事を聞いてくるから、謙介はそれを想像して声を震わせた。
「いや、知らない」
もちろんLINEの書き込みなので、怖がっているのはバレてないと思うが……。
「幼稚園の頃、絶対あの砂場に何かいるって噂になったでしょ?」
「…………」
「あれでみんなミミズンって呼び出したんだよ」
「忘れた。もうガキじゃねーから」
というか、謙介は想い出したくなかった。その呼び名を文字で見ただけで気持ち悪くなって吐き気がする。
『まったく柑乃のヤツ、なんで今更そんなこと言い出すんだ?』
もううんざりしてLINEを終了して、念のためスマホの電源を切った。
『子供の頃の恐怖体験ってのは中々消せねーんだよ。オレだけじゃない。アレを知ってる子供たちは幼稚園からずっとあの公園に行ってないはずだ』
それくらい、衝撃的だった。
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