イケメン教師の正体

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 龍弥はトイレの前を通り過ぎて廊下を曲がると足早に用務員室へ向かい、出入り口のドアを開けて待っていた黒木から幼虫の入ったガラス瓶を受け取って鞄に入れた。 「元気そうだな?」 「ああ、これから面白くなるぞ」  龍弥の言葉に黒木は微笑みを投げかけたが、利害関係で成り立っているだけで信頼している訳ではなかった。 「退屈しのぎにはなるが、度を過ぎるのはどうかと思うぜ」 「問題ないよ。僕の計画は完璧だからね」 「時々、お前だけの考えなのか不安になるが」 「とにかく黒木さんは僕に協力してくれれば、悪いようにはしないから」  お互い腹の探り合いをして、龍弥が背を向けて廊下を歩いて行くのを黒木は顔を少し顰めて眺めてから部屋に戻った。  佐知子は学長室へ入ると窓側の木製のデスクの席に着き、眼鏡をかけて鞄から朝礼の原稿を出してチェックを始めた。  室内には本棚とクローゼット、棚にはトロフィーと盾が飾ってあり、龍弥がドアをノックして入って来ると黒革のソファーに座る。 「早かったわね」 「はい。教員室には寄らずに来ましたので」  龍弥は鞄を死角になる左側の脇に置いて、幼虫の入ったガラス瓶を出して佐知子が原稿に視線を落としているのを確認した。 「朝礼のスピーチの準備ですか?」 「ええ、あなたもチェックして欲しいの」 「もちろんです」  そう言って立ち上がって原稿を受け取ると、ガラス瓶の蓋を開けて砂と幼虫をデスクの上に撒き散らした。
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