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天井の幼虫は配線コードみたいにぶら下がって丸い眼を覗かせ、教室をぐるっと全体を見回して謙介の姿を発見した。
「うぁ~」とさっき呻いた謙介の表情を小さな丸い眼を通してミミズンへ送信する。
それを砂底で座禅を組んで瞑想していたミミズンが受信して懐かしそうに微笑む。
『トモダチ……』
ずっと前の事であるが、砂場のある公園で幼い謙介と出逢った頃を思い出す。
夕暮れの公園で謙介に見つかって目が合った時、ミミズンは心が通い合える人間もいると感じ、そのトキメキを今でも鮮明に覚えていた。
謙介はトラウマになっていたが、ミミズンにとっては希望の瞬間だった。
『友だちになれるかも?』
そしてその後、その男の子はトイレの壁に『ミミズン』と落書きした。
夜のひっそりとした公園で月明かりに照らされたその落書きを見た時、ミミズンは感動して涙を流しながらその名前を覚えた。
『ミ…ミ、ズン……』
その子がボクの名前を付けてくれたんだと理解し、『ボクの名付け親で、唯一の友だち』だと思ったのである。
そしてお互い成長して大きくなったが、ミミズンは一目見て『トモダチ』だと分かった。あの時とぜんぜん変わってない。謙介は優しくて純粋な心の持ち主だ。
『ココロで感じる』
それはミミズンが持つ特殊能力であり、謙介自身も気付いてはないが、精神感応に似た感覚的な能力の持ち主だったのである。
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