校長と教頭

2/3
108人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
 その時、謙介と柑乃は廊下の曲がり角で校長と教頭が教員室から出るのを覗き見て、慌てた様子で早足で学園長室へ向かうのを不審に思って偵察した。 「学園長室のドアをノックしている」 「ああ、怪しいな」 「どうする?」 「任せろ。学長室の隣が展示室になってるだろ。あそこから覗けるはずだ」 「オザケン。なんでそんなこと知ってんのよ?」 「俺、何度も授業抜け出して隠れてたから。その経験値だ」  そう言われて、柑乃は呆れた表情でつい嫌味を込めて褒めてしまう。 「さ、流石ウザケン」 「それ言うなって」 「ご、ごめん」  二人は校長と教頭の姿が見えなくなると、教員室前の廊下を身を伏せて進み、壁沿いに横歩きして展示室に忍び込んだ。そこにはクラブや個人の優勝トロフィーと賞状が飾ってある。  壁の一部に板張りの収納があり、その中に入って柱の隙間を覗くと、学園長室の革張りのソファに座って話している校長と教頭が見えた。  そしてもう一匹、ずっと謙介を天井裏の換気ダクトから追っていた幼虫も降りて来て壁の穴に参入した。 『ヒッ……?』  それに気付いた謙介は口を押さえて必死に悲鳴を呑み込んだが、柑乃は何も知らずに幼虫と一緒に学園長室を覗いている。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!