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 その言葉に、NISEMONOはフードを取った。 「これでわかりますか?」  その声は聞き覚えがあった。それも、最近の話だ。でも、すぐに誰かわからなかった。だって、いつもの彼女はたどたどしい口調だったから。 「まさか、佐竹さん? でも、なんで……嘘でしょう」  美香は美咲の仮面を脱ぎ捨てていた。初めて見る圧倒とした美香の態度に身が引けた。 「正解です。いやいや、演技というのは似合わないものですね」 「なんで……どうして……?」  大河の混乱している様子に美香は呆れるようにため息をついた。 「私は見てしまったんですよ。六田奏子の事件を知ったあなたが崩れている横で不敵な笑みを浮かべている黒沢美咲の姿を」  大河に口を挟む隙間を与えないように美香は言葉をまくし立てる。 「そのときに直感しました。あれは全て彼女の計画であると。でも、そんなことを知らないあなたは私なんかよりも黒沢美咲を見ていた。結局のところ、無色透明でどこにいるかわからない私が、あなたに意識してもらうためには色が必要だった、それだけの話ですよ」  言葉にならなかった。そんな理由で、NISEMONOになりクラスメイトたちを殺めてきたのかと思うと。ただ、咎められるほど自分は何かしたのかと思い返せば、何もしていないことに気がつく。  自分もまた自己満足の世界に閉じこもり、傍観者であったのかもしれない。 「とはいえ、我ながら楽しかったですよ。無色透明であることを利用できましたし、私は母がいれば誰にでもなれるんだって実感しましたし、そうも思いました。木村綾子にも、加賀萌絵にも、そして、黒沢美咲にも」  美香は彼女らの特徴を掴んだ声を披露し、名前を読み上げた。そのときに絶対音感を持っているんだという美香のたどたどしい口調が脳内に響いた。 「そんなすごい力があるなら、女優でも声優にでもなった方がよかったんじゃないか?」  精一杯の皮肉は声の震えによって台無しだった。美香もまるで賞賛されたかのように笑顔を浮かべ謙遜した。 「いやいや、あなたにそう言われるとは思いませんでした。でも、これでNISEMONOごっこは終焉です」  そう美香が言うと、サイレンが街中に轟いた。  もっと早くに気づくことはできなかっただろうか。大河はずっと自分の心を握りつぶしてやりたい衝動に駆られていた。
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