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 自分にどんな感情を持っていても美咲は大切な仲間だった。確かに、何度も裏切りともとれる行為で、大河の心をぐらぐらと揺らがせた。前に進む足を削ぎ取られたような感覚もあった。  でも、いなくなっていい人間ではない。まだ、中学生の頃の思い出も聞いていないではないか。美咲の本心だって聞いていない。  人の記憶だけ奪っておいて、先にいなくなるなんてずるい話だ。 「佐竹さんは美咲や蓮や陸斗のことを仲間だと思っていなかったんですか?」  大河は声を必死に絞り出した。 「全ては計画のために近づきました。目的はしっかりともっていましたから。最大限に利用できましたし。そして、こうやって目的も果たせた。あなたをずっと見ていた甲斐があったというものです」  嘘か真かわからないような言葉で濁らされた。  ずっと見ていたという言葉に大河は一つの可能性にたどり着く。あのときのずっと見られていたような感覚が蘇る。 「黒沢さんの家から出てきたところをつけてきたのは佐竹さんですか?」  美香は大河の問いを即座に否定した。 そして、こう続ける。 「あれは飯田蓮ですよ。私はその後ろにいました。おそらく、私の感情と一緒だったとは思うのですが、相手が違ったみたいですね。まあ、当然といえば当然ですが……」  美香はどこか楽しそうに言葉を並べていた。  次々となだれてくる事実に大河は必死に食らいついた。蓮は情報屋で中立の立場を取っていた。でも、彼もまたロボットではなく人間だった。それも、多分向けられた感情は嫉妬だ。 「蓮がそんなこと……」  言葉が心だけでは収まらず、口からこぼれ落ちた。 「最後の最後まで、あなたは目を背けるのですか。今までやってきたように事実から……」  頭に血が上り、我を忘れて美香の胸ぐらを掴んでいた。自分自身でも気がついていた。そう、核心を突かれたのだ。嫌なものには蓋をし続けてきた。だから、六田奏子の事件すら思い出すことができないのだ。 「お前に何がわかる……」  声も手も震えて、まるで自分の身体ではないような気がした。今まで内側に溜められていたエネルギーが解放された。 「私の家にまで来て、私がNISEMONOだって気づかないあなたに言われたくないですね。まあ、もう終わりですから、全て言いますけど、あれは本当の家じゃないんですよ。あそこ、父の家なんです。いわゆる、NISEMONO製作所でした」
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