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ハロウィンに集まりし忍者
コーヒーにあんぱんが準備されているが、トーク会という名の取調室みたいで緊張感が走る。
どこまで話したらいいのか迷っていたが、聞かれた事に順番に返答していく作戦にした。
途中滋さんが中座すると、社長というより田村さんを向いて話していた。
「朧にまで能力を気に入られてしまうとは……イザリ屋に入る条件は刻印ですが、個々によって与えられたチカラが変化するようですね」
「ワシ達以外にも与えられた者がおると、厄介事に巻き込まれそうじゃな。それより……ワシの時は説明もなかったし、解放する訓練もしてない」
田村さん達は真面目な顔つきでお互いを見つめ、徐々に小声になって相談をしている。
もうこの場に居ない方がいいか迷ったが、糸の事を聞いておきたかったので口を開いた。
「あの、妹分も預かった糸ですが身体に害はないんでしょうか?」
「大丈夫じゃとも、ワシも記憶があるが、チカラを小出しにするとは聞いてない……ってかさ、あの狐差別してね?女子だけ贔屓してね?」
同族と思われてるのではと言いたかったが、今はキツネが拗ねているので止めておいた。
滋さんが戻ってくると、念の為に瑠里も呼んだと言われ、まだこの部屋から解放されないようなのでコーヒーを頂く事にした。
万が一異変があった場合、ここでなら対処してもらえるからかもしれない。
自宅で私みたいな事が起こったら、啄の階が吹っ飛んでしまう。
力を解放される訳じゃないので、心配はないと思うが、身体検査も含めて木村さん達に診察してもらう流れだろうと予想がついた。
暫く質問を繰り返されていると、疲れきった表情の瑠里が面倒臭そうに部屋に入ってきた。
草刈りを終え仮眠を取る寸前だったのか機嫌も悪そうだ。
近づいてコッソリ説明をしていると、社長がカレーぱんを持ってきて、食べた瑠里は幾分か元気を取り戻している。
消毒と検査が終わった糸が運ばれ、全員でトレーニング用の部屋に移動し、緊張しながら私が結んでみる事にした。
妹は顔色を変えず早く終わらせてくれといった表情だ。
結び終えると糸が体内に吸収されたように消え、説明をあまり聞いてなかった瑠里は少し焦り顔になっていた。
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