ハロウィンに集まりし忍者

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「待て!報酬貰わずに帰る気か、とりあえずパンはあっちに沢山あるぞ」 「あ、そうだった」 チビカボチャについて行き、部屋に案内されると、ラックに乗せられたパンの山が一杯あった。 「好きなだけ持って帰れ、残りは明日に渡す」 パンを嬉しそうに袋に詰めてる間、カボチャと滋さんがコソコソと密談をしている。 それにダンス前からフラレカボチャの様子もおかしい気がする。 まさか瑠里の綺麗さにトキめいたのではと過ぎったが、それ以上膨らまなかった。 相手は性格悪いあまのじゃくで、例えるなら啄と同じグループだし残念ながら相手にしない筈だ。 帰り道パンを入れた袋を二つずつ下げながら、一応カボチャについて触れてみた。 「あのカボチャ……ちょっと瑠里の事気になってなかった?」 「あんなの相手にしないよ、もっと大人で包容力のあるオッサンがいい。恋なんて幻だよ、私は一家の大黒柱だからね」 「……うん」 オッサンってどれくらいの年齢を差しているのか分からないが、妹の実年齢は何歳かと再確認したくなる。 現実をしっかりと見つめ、恋なんてする気はないのは分かるが、ずっとこのままではと先が不安にもなる。 「ドラム缶が40歳前後であの体型に変わったから、それまでにどっかの金持ちじじい見つけて老後の心配を安定させるか、自分で稼ぐかどっちかにするよ」 「でも、ちょっと恋愛っぽい経験も必要かもよ?」 「姉さんが代わりにしといて?滋さんは気がありそうだけど、あの人何を考えてるか分からないから危険だと思う」 言われなくても分かっているが、妹はもう酸いも甘いも知ってる感じで、隣を歩いてる人は半世紀くらい生きている人のようだ。 家のドアの前につくとドタドタとタタタッといつもの足音が聞こえてくる。 「おかえり、わっ、パンが山盛りだよイナリ~!」 袋四つを軽々と持ち、リビングに入るドラム缶に瑠里と目を合わせ深いため息をついた。 テレビは勿論時代劇だが、パンに目もくれずイナリはドラム缶の膝の上で画面に見入っている。 どうやらいいシーンのようで、私達も邪魔しないようにコーヒーをいれて座って見ていた。
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