ハロウィンに集まりし忍者

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母お気に入りのテツは長い針のような物を口に咥えていて、普段は針師をしているらしい。 隣を歩いてるのはタツでキセルを燻らせている。 風を操る気ままな奴で仕事の時はフラッと現れるようだ。 あとは刀を使うサブキャラが二人程隣を歩いているが、名前はよく知らない。 始末する相手の武家屋敷にそれぞれが入り出すと、ウチの始末屋も何故か配置についている。 母は食べ終わった団子の串を口に咥え、イナリはスタッと床に降りきちんとおすわりをしていた。 「なにあれ、自らもメンバーの一員?」 「さぁ?ってかテレビの前で邪魔なんだけど」 テツが敵を倒すシーンは母が代わりに再現してくれているが、素人のモノマネを見ていても臨場感は全く伝わって来ない。 「タツ!あとは任せたぜ」 母が親指を上げると今度はイナリが前足を舐める格好をしたので、私達は慌てて押さえようとした。 「邪魔だよお嬢さん方、タツに任せておけば問題ない」 攻撃態勢を放っておくと家が吹っ飛ぶと思ったが、イナリは素振りするように足を降ろしただけで異変は起きなかった。 テレビの画面ではタツが風を操り、敵がクルクルと巻き込まれ抵抗出来ずにいる。 風がやんだ時には敵はすべて倒れていて、テツが親指を立てると気取った感じでキセルを咥えていた。 勿論うちのイナリもドヤ顔を決め、テツ…いや母の膝に戻り、袋を開けたパンを一緒に食べ始めていた。 「ちょっと…待ってあのポーズ、もしかしてこれ発信じゃないよね?」 「しかも全部親指立てたら解決してたよ…」 必死にチーズたらを与えながらイナリを止めようと頑張ったのに、こんな簡単な合図で言う事を聞くなんてもっと早く教えて欲しかった。 「この時代劇ごっこって、何パターンかあるの」 恐る恐る母に聞くとパンを口に入れながら伊賀編、立ち合い編、馬に乗る編等沢山あると聞いて嫌な汗が出てきた。 「私とイナリは毎日時代劇で技を覚えてるから、もう気持ちの中ではメンバーの一員だよ」 「アニメに感情移入して現実逃避してる人みたいだから…止めてくれない」 「違うって、ボケ防止にいい運動になってるよ、イナリも私もいいフォーメーション組めるようになってきたから」 目の前が少し暗くなりフラついたが、踏ん張って立ち上がると、風呂に入ると言ってリビングを出た。
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