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頭を洗いながら考えを纏めたが、恐らくイナリの技はウチのドラム缶が教えている。
時代劇のモノマネがきっかけだろうが、ドヤ顔や股を開いて寝るに続き、風圧の技も覚えてしまった。
一緒にいると危害が及ばないか気になっていたが、人に懐かない山金犬なのに、むしろ母に服従して技まで覚えて成長している。
私達の一家は例外だと言っていたが、実は母が根源ではと過ってしまうし、以前イザリ屋の夏祭りで刻印が8つも出ていた。
消したとはいえ、まだ何か残っている……はさすがにないと思うが母とイナリの息はぴったりだ。
食欲といい暮らしぶりといい、母と相性がいいのは分かるが、ここまで影響されていたとは驚きだった。
着替え終わってリビングに戻ると瑠里はバスルームに向かい、母とイナリは股を開いて寝ていた。
「このコンビ……本当に怖いな」
完全に安心しきって眠っているイナリを見ると、まだ田村さんに相談するまでではないかと目を細めて眺めていた。
翌日は瑠里が早くから支度を済ませ、報酬を貰う気満々なのが伝わってくる。
私も準備を急かされ足早に職場の受付に向かった。
まだカボチャ達は到着していないのでトレーニングでもしようとつなぎに着替え、木村さんにはダンスの腕前を褒めておいた。
妹はかしわ餅を膨らませたり、武器になるようアレンジしていたが、そもそも餅を別の物に変えたらいいと思うがそこは変更する気はないらしい。
私は糸が結ばれていた指に意識を集中させ、解放された時のイメージをしていたが、確か肩こりが楽になったような爽快感だった。
「姉さん、見て見て~!」
嬉しそうな声に振り向くと、瑠里の背を遥かに超えた巨大なかしわ餅に思わず大声を出した。
「アホか!そんなもん邪魔以外の何者でもないわ、しかもどうやって使う気?」
「それがね…」
ヒョイっと片腕で持ちあげた瑠里はニンマリと笑っている。
「ほら敵に追いかけられた時に、足止めに投げたら良くない?私凄っごい力持ちになったみたいだし」
「いや、あんまり機会ないと思うけど…その力持ちは使えそうだね」
あんな岩のような重いかしわ餅を、キャッチボールみたいに気さくに投げられても困りものだ。
瑠里のかしわ餅の爆弾も急に投げてきて迷惑する事が多々ある。
おまけにあれを黙って投げられたら、ウチのチーム内に被害者が出そうで怖かった。
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