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どんよりした空気の帰り道、啄が珍しく口を開く。
「専任の監督者がいて厳しいらしいが、ウチの滋兄や爺さんみたいに酷くないから大丈夫だろ」
「一番心配しないとダメなのアンタでしょ?毒以外で役に立つの?」
「一応、双棒から刀は出せるし…稲膜も少しは張れる」
私達がイザリ屋に入った時レベルなら、金どころか半分脱落決定のハンコが押されたようなものだ。
「協力すれば何とかなるだろ?最後まで残れとは言わねーし、ちょっとハードなトレーニングに参加すると思って経験を積もう」
リーダーがいいシメの言葉を掛けてくれたところでコンビニが見えてきたのでそこで解散となった。
家に戻ると明日から母はハツさんの所へお泊りに呼ばれていると支度をしていた。
明日は私達も早いので都合もいいし、イナリもバッグにオヤツを詰められ気になってる様子だ。
ハツさん宅なら立花の息もかかってるし何かあっても安心そうだ。
根回しをきちんとされていて若干怖いが母とイナリの心配は不要だ。
休みなら一度イナリを連れて指の合図を練習してみたかったが、それは次の機会にするしかない。
みんな明日の準備もあるので、順番にシャワーに入り時代劇を見るのもそこそこで切り上げ早めにベッドに入った。
翌朝、母はおにぎりを作ると早々に出かけてしまい私達も支度を済ませて朝食を食べていた。
今回は二泊の泊まりだし下着や着替えの準備も済ませている。
オヤツのグミやお泊り用のスキンケア用品と薬や絆創膏等も入れている。
瑠里のバッグは相変わらずパンパンで五日くらい泊まるのかという位無駄に大きかった。
受付に向かうと木村さんが不思議そうな顔をしていたが、まずはロッカーで着替えを済ませた。
「折角準備してきたのに申し訳ないんだけど、場所はあちらの世界だから、私が全部支度済ませてる。オヤツ類だけリュックに入れておいたから」
「えっ……」
まさか合宿が違う世界で行われると思ってなかったので、少し緊張しながら指定された部屋に入って行った。
リーダーと啄も眠そうな顔をしていて、目覚ましのコーヒーを飲んで座っていた。
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