ハロウィンに集まりし忍者

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着替えを済ませ受付で荷物を預かると、検査済みのケーキと香水を渡された。 カウンターには創業祭のチラシが貼ってあり、横目でチラリと見てから妹と職場を後にした。 創業祭は工場と合同で行われ、勿論表の仕事のパン屋のイベントの一つだ。 新作の菓子パンや和菓子も発表され、時期的にハロウィンを真似て従業員は仮装して参加が基本らしい。 少し前にリアルハロウィンを経験したのでどうでもいいが、社長が『絶対参加してね』と言った以上拒むと家まで迎えが来そうだ。 衣装は妹が映画の時に買った忍者探偵Xに決まりだが、私はぶっちゃけ乗り気ではない。 母は安くパンが買えるかもしれないし、くじ引きでいい物もらえるかもと参加もしないのに勝手にワクワクしていた。 私達は月給で大金を貰っているのでボーナスは出ない。 でも母は正社員で働いてるので貰えると期待し、おねだりの品を悩んでる様子だった。 「今日お爺ちゃん達の墓石の下にヒビが入ってたみたいでさ、ボーナス出たら修復したいとか言い出してたよ?」 「げっ、マジで!高そうじゃんそれ」 普段大金を貰っているとはいえ、いつ貧乏に逆戻りするか分からない。 密かに二人で貯金はしているが、誰も住んでない祖父母宅の管理に出費もしている。 今からは冬用タイヤ代等、お金はいくらあっても邪魔にはならない。 「ペットショップで子犬がね、フカフカのスリッパ型ドームで寝ててさ、イナリにいいよねとも言ってた」 私達ですら欲しい物をあまり買っていないのに、母とイナリの希望の品を瑠里の前で言う図々しさにイラッとしてきた。 「寸志だって言っとこうよ、普段の給料から少し差し引いてさ、無駄な出費は避けたいもん」 「でもね、啄が気になる事を言ってたんだよね」 創業祭の辺りに金刺繍を受ける人達の合同合宿があり、それに参加して最後まで残ると、試験を受ける権利とボーナスを貰えるという事らしい。
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