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「いやいや、無色だしいきなり金なんて無理だよ、合宿で命落としかねないじゃん」
「まあね、後は面談に呼ばれた人も寸志というかプチボーナスあるみたいだけど、お声がかかってないもんね」
貧乏人に限って出費が嵩むのは世の常かもしれない。
でも以前よりはずっと生活も楽になっているので、あまり欲を出さずに地道に貯めていくほうが正解だ。
家に戻ると草刈りの疲れからか出迎えはなく、リビングで手に湿布を貼っているドラム缶が時代劇を見ていた。
「はぁ…作業でクタクタだよ、私はもう寝るから今日は適当に食べて」
イナリは既に股を開いて熟睡している。
その日は冷蔵庫の残り物を片づけ、翌日は妹と私の初運転で大型スーパーに向かっていた。
日用品の買い物は済ませているが、頭に引っかかっていたイナリのベッドと、墓石屋で金額を確認したかったのだ。
どうも母には甘い妹だが、私も犬用ベッドがどれくらいするのかは気になっている。
まずはペットショップから見ようと駐車場に車を停めた。
ここはペット用品は勿論、子犬がいつも並んでいて買い物客の癒しの場になってるようだ。
私達が知らないミックス犬や、トイプードル、ポメラニアン等の子犬達がガラス張りのゲージの向こうでジャレていた。
「可愛い…トイプードルとチワワのミックス犬だって、でも高っ、36万円する」
毛並みは柔らかくクルッとしていて、目はチワワのように瞑らな瞳がこちらをみている。
猫派だった私達も、イナリのおかげでスッカリ犬の方ばかり目を奪われていた。
「アレじゃない?今子犬が挟まって寝てるフカフカしたの」
クッションに見えるが、靴下のような柄があり中はホワホワで半分がくり抜かれている。
フカフカのスリッパという例えがよく分かった。
グッズコーナーをみると値段は一万円を切っているので、思ったほど手が届かない金額でもない。
私達はニヤリと頷き『これは買い』と決めてスーパーを後にした。
あとは墓石屋さんだったが、見積もりを立ててもらうと30万円位はかかりそうだ。
大金だがお爺ちゃん達のおかげでここに入れた気がするので、ケチらない方が良さそうだ。
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