ハロウィンに集まりし忍者

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「やっぱ旬なだけあってカブりまくったけどまぁよい、浮くよりはマシだし」 私達は黒だったが、他の人は青や赤やピンク等のカラフルな忍者も数多くいた。 匂いに誘われてパン工場側の敷地に行くと、中が一部解放されていて食べ物コーナーが並んでいた。 飾り付けもしてあって、創業祭なんだかハロウィンだか分からない状態だが、兎の世界のパーティを思い出し少しワクワクする。 あんなに豪勢ではないが、アットホームな感じも緊張しなくて気が楽だ。 瑠里はお目当ての品を見つけ、ローストビーフの列に並び始めた。 和音さんも次に並び、私は肉に興味がないので隣のサンドウィッチの列を選ぶ。 パン工場なので絶対美味しいに決まっているし、どれにしようか悩んでると不意に肩を叩かれた。 「クミちゃん探したよ~、今日はダンスパートナー宜しくね俺楽しみ……」 「すいません、人違いですけど」 後ろには忍者の格好にカボチャ色の目ざし棒を被った人がいて、間違いだと言うと少し焦ってから舌打ちをされた。 「なんだよ紛らわしー格好しやがって、クミちゃんかと思ったらただのチビだったわ」 失礼極まりない間違い忍者の首根っこを掴んでシバいてやりたいが、ここはパン工場の人もいるしグッと堪えた。 「心配しなさんな、人で態度変える奴なんて最低だしフラレる。忍者の格好にカボチャの目ざし帽だってダサいし、頭のバンドのゴールドも腹立つ!」 ローストビーフを食べながら瑠里がフォローしてくれたが、イラッとしたポイントは絶対ゴールドのバンドを付けているという事だ。 「そうだね、ツナとタマゴサンドにしよう」 気持ちを代弁してくれたおかげで、スカッとした気分でサンドウィッチを手に持ち妹について行った。 それから妹はローストビーフの列に何度か並び、私は飲み物を取りに行くと木陰に座って食べていた。 途中社長がマイクを持って挨拶をしていたが、格好は忍者で話が長いのかあまり誰も聞いてない。 「最後に、毎年恒例のダンスもあるので皆さん振るってご参加下さい」 年寄りの長い話が終わると、みんな新作のパンや和菓子コーナーに足を運んでいた。
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