消えたルイーザ

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城塞都市バーデン。 ついこの前まではルグエン・サウィル男爵が治めていた都市で、人口はこの地域では平均の五千人ほど。 特別大きな都市というわけでもなく、防御力も平均かやや下回る程度。 サウィル卿がエヴィ率いるフィラントロピア家に敗れた結果譲渡されることになり、当面の間本拠地となる都市である。 なんて知識を聞いてる場合では無い。 「ルイーザがいなくなったってどういうことだよ!?」 突然聞かされた報告が信じられず思わず大声を張り上げてしまった。 場所はバーデン内にある居館で公邸と庁舎を兼ねている建物。その一室である。 「まぁ、そうカリカリすんな。俺はただ事実を述べただけなんだからよ」 激昂した俺とは対照的にあくまで冷静な態度を崩さず告げるのは、俺の上司となったアグリス・ヴァールハイト。 「落ち着かれよ、アルカ殿。上役の前であるぞ」 この部屋にいるのはもう二人。 アルカの機転により命を助けられフィラントロピア家の兵士として雇用されたリシャールさんと執事見習いのリュックさんだ。 「確かに山賊になるのはゴメン、貴族に使われるのも気が進まないと言っていましたが……」 リュックさんは努めて冷静に記憶を辿り、事実を述べている。
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