私の上司は厨二病

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 私は必要書類をまとめ、溜息とともに重い腰をあげました。悲しいことに、私は直属の部下という立場上、あの後藤係長と接しないわけにはいかないのでした。子供は親を選べないのと同様、部下は上司を選べません。  ずらりと事務机が並ぶ中、ぽつんと離れたところにあって妙に存在感を放つ、一つの事務机。そこが後藤係長の席です。物件なら日当たり良好の窓際でした。  机の上には、たぶん読みもしないアラビア語新聞や怪しげなタイトルのオカルト本が無造作に置いてあります。また、変なアクセサリーがそこかしこに飾られていました。正直、悪趣味で彩られた空間です。  カーテン越しでも伝わる真夏の日差しの中、後藤係長は今日も季節はずれのロングコートを決めていました。いくら冷房が効いているとはいえ、炎天下の中を歩いてきたので顔は汗だらけ。テカテカと脂ギッシュです。  なのに、後藤係長は決してコートを脱ごうとはしません。曰く、キャラが崩壊する、とのことでした。なんのキャラだよ! と野暮なツッコミはもちろんしない私です。  近寄ると、中年特有の加齢臭が鼻を突きました。ムセそうになるのを必死でこらえながら、私はどうにか口を開きます。 「失礼します。少しよろしいでしょうか?」
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