1人が本棚に入れています
本棚に追加
吐き気に襲われ、思わず息をとめてしまいます。
「ほう。オレの張った固有結界をあっさりぶち破るとは……。なかなかの手腕だ。さては、光の者か?」
いえ、ただの新入社員ですけど。
「昨日指示された書類です。チェックしていただけますか?」
芝居がかった後藤係長のあいさつをスルーし、私は用件をさっさとすますべく書類を渡します。一刻も早くこの空間から抜けださないと、本当にゲロをぶちまけそうでした。
そんな私の気も知らず、後藤係長は一枚一枚丹念に穴が空くほど目を通します。と、ピタリ。後藤係長の手がとまりました。
「むむむ!!」
なにやら食い入るように読みはじめたかと思うと、右目につけている眼帯を荒々しくはずします。
曰く、この漆黒の邪眼が解き放たれるとき、すべてが見透かされる、のだそう。それ、はっきり見えるようになるだけじゃん! とツッコミたいのですが、面倒なのでしません。
「この邪悪たる召喚呪文の欠如によって、世界はたちまち暗黒の炎に覆われるだろう。悪魔神官よ。このカルマを重々理解してもらいたい」
最初のコメントを投稿しよう!