第1章

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巡回中のオマワリサンを見ただけでなんとなく不安な気持ちになる。 威圧感を出す制服は好感が持てるものでは無いし融通の利かない対応も嫌いな理由の一つだ。 以前にもアルバイト先から自転車でアパートに帰る途中に2人組の警官に1日に3度も呼び止められた事があった。 その度に無線で連絡を取って登録番号と氏名を確認するが呼び止めて来るのは全て同じ警官だった。 さすがに3度目に声を掛けられた時には何故、何度も呼び止めるのかと意見したが 「直ぐに終わります」 と言われいつも通り御協力をさせられた。 馬鹿馬鹿しい。仕事に力を入れている雰囲気を見せているのは地元住民に対するアピールで結局は役所仕事なのだろう。 その日以来、交番のある道路から逸れて人通りの少ない道を選んで帰るだけで全く出会さなくなった。 そんな職業の人間が俺と話をしたいと言っている。 憂鬱な気分。 つまり俺は今日、この部屋の主でありながら本物の刑事とは言え訪ねて来た客を前にして緊張面を晒したまま受け答えをしなければならない予定になってしまっている。 しかもその内容は6日前に交通事故で死んだ上村美樹に関してらしい。 一体、何を聞きたいと言うのか。事故とは無関係とは言え気が落ち着かない。 交際の有無を聞かれる事はあるとしてもそれ以外は特に無いはずだ。 最近よく見る気持ちの悪い夢。妙に現実味を感じるあの夢の話もしない方が良いだろう。 話したからどうなると言う類の話では無いし、余計な話をした所為で刑事の滞在時間が長引いてしまうのは嫌だ。 夢を見始めたのが逆算して美樹の事故の日からだったという気味の悪さはあるのだけれど。
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