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その奇妙な店は、客がいなかった。
どっかの宇宙貴族の道楽息子が気まぐれに太陽系を買い取りコレクションに加えたせいで、太陽系からの客足がぱったりと途絶えてしまったのだった。
銀河系共通言語のパトゥルケラト語で店主は罵った。彼は夢を売っていた。
時には逢えないもの同士を結ぶカササギとして、時には人に信託を告げる天使として、ほかにもいろいろな役割を負っていた彼であったのに、件の道楽息子のせいで地球からの売上げはパァになり、彼はここ数年赤字続きだった。
それだけでもきついのに、なぜか今唐突に宇宙イグアナの大群が彼の店の屋根の上に巣を作り、その重みで彼の店は物理的にもひしゃげていた。
こんなことならどこの星の重力も及ばないところに店を構えるべきだったと後悔しても仕方ない。宇宙イグアナは彼の信じるモィリィプテラ神の化身とされる生き物であり、追い出すわけにもいかなかった。
どうしたもんか、と彼は悩んだ。ここで店がつぶれれば、100余の奉公者は俺を食うだろうと思った。
彼は宇宙で最も美味しいとされる種族であった。
これまで食われなかったのは、幸運としか言いようがない。しかしその運ももはやつきそうなのであった。
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