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太陽系外で夢を必要とするものは少なかった。未開の太陽系には不可能が存在したが、もはやこの宇宙に不可能はない。
俺が食べられないことも可能なら、逆に誰かが俺を食うことも可能なのだ。
無数の選択肢の中で、自分にとって一番利益になる道を選ぶ事を最優先させる、この宇宙に生きるもののほとんどがそうだ。
店主はすっかり困ってしまった。これまで自分が食われずにいたのは自分より美味しいと思われるものを作ってまかないとしていたからだ。このままでは自分よりうまいものを作るための食材を得るための職を失ってしまう。
彼はじっと考え、それから奉公人を皆集め、そして宣言した。
「皆も分かる通り、この店には客がいない。このままだと経営が危うい。そこで、解決策を考えた。」
店員がざわめくのを咳払いでいさめてから店主は言う。
「俺がこの店の客になるのだ。」
彼はその通りにした。
彼は彼自身に夢を売った。
彼の夢は、自らが買う側に回ることだった。奉公人たちそれぞれについて、どう料理するのが上手いか、彼は綿密に思い描いていた。
ふと目が覚めた時、彼はご馳走に囲まれていた。それから様々な噂が広まり、その奇妙な店に客が来ることは無かった。
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