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くるみはりんを見るとつい意地悪をしてしまうと言ってなかったっけ?
水をかけられたこと以外で、意地悪をされたことなんてあったっけ?
「葉山さんて葉山くるみさんのこと?」
「おばあさん……それ、三回目だよ?」
りんは苦笑いした。
「ああ……そうね……葉山さんはご親戚もH市に住んでいるから」
「へぇ……そうなんだ……」
一応納得したように返事をしてみたが、おばあさんがとってつけた言い訳をしたことを見やぶれないりんではない。
奈津の話でも葉山家は明治維新前からH市に在住してて、道南に多い苗字なのだそうだ。しかしおばあさんは確かに葉山くるみに何か特別の思い入れがあって、それを隠したくてごまかしているようにしか思えない。特別な思い入れというのは、きっと『去年のこと』に関係しているのだろう。
「葉山くるみさんのことずいぶんと気にするのね。学校で何かあったの?」
「葉山さんちの前で上から水をかけられたんだよ」
「え? まさか!」
おばあさんは目を丸くした。にわかには信じられないようだ。
「ま……まさかそんなことはしないでしょう?」
「そのまさかだから、今とは違う前の葉山くるみっていう人が気になるんだよ」
「……でも……どうしてりんに水なんて……」
「航貴さんに神宮のバイトを頼まれたのが許せないらしい」
おばあさんは困ったような顔をした。
「それは……子供のころから仲がよかったからやきもち焼いたのかもしれないけど……でも……水なんて……」
りんだって信じられない。
「そうねぇ……前は頭がすごくよくて――」
「それは前聞いたよ。今もすごく頭いいし。そうじゃなくて、どんな性格だった?」
「どちらかといえばおとなしくて出しゃばらないし、かしこいから立ちふる舞いが常識的というか、大人っぽいというか、品があるというか」
一言でいえば水をかけるような変人ではなかったということか――
「でも……変ねぇ」
おばあさんは首をかしげる。
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