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風は物悲しい旋律を奏でる。
凪いだ海は夕日に照らされて、金色に輝いている。
光が踊り、むじゃきにはしゃぐ季節が終わったことを、海は知っていた。
「くるみから全部聞いたよ」
りんのかたわらで航貴さんが重い口を開いた。
海から吹き上げてくる風に、航貴さんの短い前髪がさらさらと揺れる。
航貴さんに会うのは夏祭りの日から二か月ぶりだ。
夏の大祭をしめるお神楽の舞い手を、航貴さんはみごとに勤め上げた。航貴さんも航貴さんのお母さんも社務所の業務に戻れるからと、入院していたせいで休んでいた巫女のバイトを、りんはそのままやめてしまった。それから会ってない。
北海道の夏は短い。
病院のベッドの上にいるうちに、残りの夏休みはあっという間に終わってしまった。退院と同時に二学期が始まり、以前よりも平穏で平凡な高校生活を送っていた。
それは葉山くるみがいないからだ。
あの日から葉山くるみはずっと学校を休んでいる。りんよりも重体で、ずっと入院していると聞いてはいたのだが――りんは一度もお見舞いには行かなかった。
あの日の翌日、りんとくるみはこの海岸で気を失った状態で発見された。
りんは海に沈んだ瞬間から意識がなくなり、目が覚めると病院のベッドの上だった。
りんが行方不明だった一晩の出来事を後で聞いたのだが、お神楽を見に行くと社務所を出て行ったきり、お神楽が終わり祭りが終わってもりんは社務所に帰ってこず、町村さんがりんの家に電話をかけても家にもまだ帰っていない。さらに社務所に様子を見にやってきた航貴の母のもとに、葉山家から連絡があって、くるみも家を出たっきりまだ帰ってないというのだ。
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