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お父さんの話によると、りんも減圧症にかかってもいいぐらいの状況だったらしいが、全然大丈夫だったから、医者が驚いていたそうだ。
たぶんお母さんが助けてくれたんだと思う。でも航貴さんにもお父さんにさえも、そうとは言えなかった。
「りんちゃんに一度でもいいから会いたかったけど自分には会う資格がないって言ってたよ」
航貴さんはりんに封筒を渡す。
「会えないけどどうしても伝えたいことがあるって。預かってきた。読んでやってくれる?」
白い封筒をじっと見つめたまま受け取ろうとしないりんに、航貴さんはやわらかくお願いをした。
りんは受け取り、封を切る。
白いびんせんが、二枚――
私を救ってくれてありがとう。
生きてはいけない私がこうして生きていることがありがたく、死にたいほど苦しい。私の本意ではなくても、私の手で犯した罪はあまりにも重く大きいのです。しかし、航貴さんが死ぬことが罪ほろぼしになると思ってはいけないと私を叱ってくれました。死ぬことは己の罪から目をそむけ、逃げることだと。
私は幼いころから旭光が好きでした。でも旭光は私をただの幼馴染としか思わず、その苦しみが悲しみのうちに入水自殺をした女性の霊を呼び寄せてしまったのでしょう。
旭光を死なせてしまったこと、女性の霊が航貴さんへ心変わりをしたことが、意識をも乗っ取られてしまった私を呼び起こしたのだと思います。その私の声を誰も気づいてはくれず、相場さんだけが私に気づいてくれました。
罪深き私が生きていいのなら、一生をかけて償いをしていくつもりです。まだどんなことが罪ほろぼしになるのかわからなく、新しい環境で探したいと思います。
相場さんと普通のクラスメートとして出会いたかったです。誰も気づいてくれなかった私の声に気づいてくれた相場さんと、普通のクラスメートとして出会って友達になりたかった。
ごめんなさい。そしてありがとう。
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