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第1章 小道の再会(続き)
「なんか、心地の好い空間だね」
「そう? ありがとう。あっ、ウチね、リビングがないの。
ここに住むって決めた時に、リビングだった部屋を改装して
仕事部屋にしちゃったから」
私は、カウンターキッチンに立ち、やかんに水を入れながら
軽い口調で説明をする。
だが彼は、今度も「ふぅーん」と気のない声で言うと
やや高い衝立で隔てられた奥の部屋に視線を向けた。
そこは、いま私が事務所としている仕事部屋。
本来は、続き部屋になっている仕事部屋と、このダイニング。
そこには、壁紙も絵の一枚もない。
だがお蔭で、その間にある大き目の窓から注がれる外からの光が
自然の息吹を伝え、飾り気はなくとも窓の向こうの景色が
一枚の絵のようになっている。
「適当に座って」
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