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いや………
普通という言葉は的確ではないかもしれない。普段なら背中を見せようものなら、闘牛のごとく飛びかかってくるような牛なのだ。それが今や無防備に床にお腹を見せて寝転んでいる。
具合が悪いのかと心配になり、慧斗は大の字で横になっている牛に駆け寄る。雌牛は近づいてくる人の気配すら感じないかのように、表情ひとつ変えない。というより、まばたきの仕方すら忘れてしまったようだ。
一通り検査をしてみる。が、特に変わったところは見つからない。むしろ、こんなに入念に検査ができたことの方が奇跡と思えるほど、雌牛はびくともせずに全ての検査を受け入れた。気味が悪いほど従順に。
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