水の記憶

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玄関を勢いよく出ると、ちょうど新聞配達のお兄さんがポストに朝刊を投函するところだった。 「おはようございます。いつもお疲れさまです」 するとお兄さんは軽く会釈をするだけで、すぐにバイクを発進させて行ってしまう。 《もしかして動物が苦手なのかもしれないな》 尻尾を引きちぎれんばかりに振っているマリンと、門の横で伸びをしているシエルを見比べながらそう思った。 今朝は8月に入っているにも関わらず、霧も出るほど冷え込んでいる。周りはすっかり濃霧に覆われていて、ちょっと幻想的な空間を醸し出している。
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