20人が本棚に入れています
本棚に追加
「君たちに任せたよ、シエル、マリン。僕には霧で先がまったく見えないからさっ」
慧斗は独り言のように、興奮ぎみな真っ黒い犬と、しなやかに歩く猫とに話しかける。
「らじゃ!」
そう聞こえた気がした。僕は自分の行動がおかしくて、くすくすっと笑ってしまう…動物と話なんてできるはずもないのに。
いつも通り長い坂道を上り、閑静な住宅街を1人と2匹は抜けていく。
坂のてっぺんからの見晴らしが慧斗の1番好きな景色だったが、今日は湿った空気しか感じられない。
慧斗は深呼吸をして思いっきり朝の空気を吸い込むと、坂を下り始める。
最初のコメントを投稿しよう!