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 少女が何気なく言うと、少年はその言葉に少しだけ怪訝そうな顔をした。そしてすぐに、首を横に振る。 「ううん。ママは、全然頭悪いよ。あんな綺麗な恰好してるから賢そうに見えるけど、僕がいないと何も出来ないんだから」 「そ、そうなの?」 「僕のことだって、馬鹿みたいに甘やかしてばかりだし、家事や買い物でさえ失敗してて、パパにも呆れられてるんだよ。パパならまだしも、ママは全く。ダメダメだね」 「……そう」  何だか自分のことを言われているようで、胸が痛む。しかし、それを自分だけでなく、自分の母親と置き換えたとしても胸は痛かった。手塩をかけて、愛情を与えて育ててきた子供に馬鹿にされる。これ程辛いことがあって良いものなのだろうかと。  少女は母親の悪口を憂さ晴らしの如く話す少年を見て、行き交う人々へと手を上げる。 「すみません、この賢いけどお母さんを馬鹿にする少年より、更に賢い男の人を交換して頂けませんか!!」 「え、え!? 何で、何で!!」 「今日一日だけ預かってほしいんです、出来れば、ゴリラのように厳しい人のところで!!」 「ご、ごりら……!? や、やだよ……」  少年の思いとは裏腹に、少年を気になり近づいてくる園児服を着た女の子が一人やって来た。 「あ、あのぅ……かしこい男の人ですか?」 「うん! この子、この若さで中学校の勉強が出来るんだよ。だから、少なくとも高校以上の賢さは欲しいかな!!」  斯く言う少女の知力は、既に小学生で止まっている。 「うん、私知ってるよ。待ってて!」 「え……ちょっと待って……ごりらは嫌だよ……」  少女は近くの公園の方へと走って行き、その人物を連れてきた。今までの少年達とは違って、スマートで背の高いその人物だが、少女は視界に入った瞬間に首を横に振る。 「やぁ、こんにちは。自分で言うのもなんだが、俳句の天才と呼ばれるおじ」 「チェンジで!!」  少女は素早く答えた。 (続く)
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