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「だったらなぜ。……マナを救おうという気にならないんだっ!!」
少年は右手を口元に近づけると、歯で銃の排莢口(エジェクションポート)をスライドさせて残弾数を確認し、静かに告げた。
「それが彼女の望みじゃないからだ……。セイラさん、これでも俺はアンタを尊敬してるんだぜ? アンタほど、この学園の生徒を大事にしている奴はいない」
「ふ……。お前の中の清廉潔白な藤堂セイラという名の生徒会長が、こんな大事件を起こすとは到底思えないんだろう?」
「そうだな。俺の中のアンタのイメージはこうだ。――精巧無比、完全無欠の生徒会ロボット。学内で起きたどんな些細な問題も、瞬時に駆けつけてすべてを一人で解決しちまうような完璧超人だよっ!!」
「ふっ……あはは。そうね。そうかもねぇ。……そうなるように私自身が私を繕ってきたんだから……。でも、そろそろ真面目な生徒会長役はおしまい。それはお前に譲って、私は、私のやりたいようにやってやるのよっ!!」
セイラの背中に向かって黒い霧が収束していく。それは大きな黒い翼となって羽開いた。
「どう。失望させちゃったかしら。お前の中の藤堂セイラは今どう映ってる?」
「……泣いてるよ。自ら進んで悪役に転じたアンタの、その引き攣った作り笑いになっ」
「ふふ……。だって、仕方がなかった。……なんて言い訳はしないわ。私は私の中の正義のために、必ずあの子を救ってみせるんだものっ!!」
「そうかい。……じゃあ俺は俺の中の正義のために。アンタの手からこの学園にいる全ての人を守ってみせるぜっ!!」
セイラはまた薄ら笑いを浮かべる。
まだひと月もたってないくせに。一著前に生徒会長らしくなっちゃって。
小さくそうつぶやいた彼女は気づいていなかったが、その時浮かべた笑顔がレイジはたまらなく好きだった。
「いくぜぇっ!! せんぱいぃーーーーーーーーっ!!」
空中でクルを手放したレイジが制服の上着から取り出したリボルバータイプの銃を握りしめると、全速力で眼前の敵に突っ込んでいく。
「この期に及んで、リミッターを解除しないアンタなんかに、全力の私が止められるとでも思って――」
黒い霧を纏うセイラを突き抜けたレイジ。
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