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空中に置いてけぼりにされ、急降下していたクルを間一髪のところで抱きかかえたレイジは、そのままゆっくりと地面に着地した。
その横で激しい砂埃をあげて地面に激突したセイラ。ギリギリの所で黒い霧にガードされた彼女だが、完全には防御できなかったようだ。
それでもよろめきながら立ち上がったのは、さすがだといえよう。
きりきりと歯を食いしばった彼女は、片足を引きずるようにしてこちらに歩み寄って來る。
「レ、レイジぃ……まだ、あの人生きてるよ?」
「……みたいだな」
どうやらセイラの向かう先はレイジではないようだ。彼女は今もなお光を放つ一本の桜の木に向かっていた。
「マナは……姉貴は。自ら進んで精霊になったんだよ。」
「え。……そんな馬鹿な? マナが精霊に……なりたかった、ですって?」
「かつてどんな精霊からも愛された優秀な召喚師は。究極の姿を求めたんだ。彼らと同じになりたいんだって、な……」
かろうじて立っていた最後の気力までもへし折られ、彼女はその場で崩れ落ちてしまう。
「――そこまでですわぁっ!!」
膝をついたセイラとレイジの前に現れた一人の女性の声で事態は終幕を迎える。
上着の上からでもわかるおびただしい出血の跡。そこに立っていたのは理事長のサクラだった。
「師匠っ!? どうしたんですか。それ……」
遠くでシャルの叫び声が聞こえる。明らかに彼女は重傷だった。
「レイジ君。――これはすべて、桜花祭の余興なんでしょ?」
「は?」
「全校生徒VS生徒会。ずいぶん馬鹿げてるけど、なかなか面白かったわぁ。……でも、リミッターを解除した生徒がいたのはやりすぎねん……」
彼女は目を細めると、放心しているセイラを見て、優しく微笑んだ。
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