どこかで、どこかで、香ばしい葉っぱの匂いがする

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とても、いとおしく、優しすぎて涙がでてしまうくらいそっとさわるんです。 「それはそうよ」 「えっ」 「だって、加奈子(かなこ)ちゃんは加奈子ちゃんだから。紅茶ってね、一つとして同じ紅茶なんてないの。だから、当たり前だけど私と加奈子ちゃんは全然変わってくるの」 優しく言っているようで、なんでなのか私には鋭く突き立てたナイフに感じられて。 それって、楓さんに憧れている私には一生無理と言われたようで。 「私は、楓さんみたいに優雅に紅茶を淹れて、店を切り盛りしていきたいんです。 楓さんはそういうつもりで言ったわけじゃないのはわかります。 けど、そんなふうに聞こえてしまうんです。聞こえてしまったんです」 受験勉強に失敗して落ち込んでいた私、奥山加奈子。 そんな時、楓さんの紅茶に出会って、人生の苦くておいしい味を知ることができた。それから、勇気を出して楓さんの弟子になって『坂のさか』で働き始めて。 いつも優美で、穏やかな楓さんに憧れていつかなりたいと心の底で思っていました。 でもなれないのでしょうか、もう、ずっと、このまま、いつまでも。
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